歯科治療後の患者様の「上半身ポートレート写真」の撮影方法について解説します。
【使用機材】
カメラ ホットシュー付き一眼カメラ(ニコン D5600、D7500、D500など*1)
レンズ 標準ズームレンズ(カメラとセット販売されているレンズで可)
三脚 上記のカメラ(一眼カメラ)に使用できるもの
ストロボ i60A*1
コマンダー Air10s*1
アンブレラホルダー FT-01
ライトスタンド LS-50C または LS-55C または LS-65C
アンブレラ 透過型または反射型
*1 口腔内写真撮影用などで使用しているカメラと同じメーカーや機種でOK。
*2 カメラメーカーに合わせてマウントをお選びください。
【撮影準備】
では撮影の準備を行います。
①組み立て
組み立て順
【アンブレラ取り付けの向き】
透過型アンブレラ・・・被写体の方向
反射型アンブレラ・・・被写体と逆の方向
②ペアリング
1.次に、ストロボとコマンダーをペアリングします。ストロボの電源が切れた状態で「電源ON/OFFボタン」と「操作ロックボタン」を同時に長押しすると、パイロットランプが黄色点滅し、「ピッピッ…」と音が鳴り始めます。
2.次に、コマンダーの電源が切れた状態で「電源ON/OFFボタン」と「操作ロックボタン」を同時に長押しすると、パイロットランプが黄色点滅します。
3.コマンダーから指を外すと、ストロボの音が鳴り止み、ストロボとコマンダーが起動し、ペアリング完了です。
ポイント
③ストロボの設定
[グループ設定]
ストロボ「i60A」を「A」グループにセットするため、モードダイヤルを回して「赤囲みのA」を選んでください。
ポイント
[ワイドパネル]
ストロボ「i60A」の発光部の下に格納されているワイドパネルを引き出します。ワイドパネルを引き出すとストロボのズーム位置(照射角)が16mmに固定されます。
④コマンダーの設定
1. 左下の「M/TTL」ボタンで、「TTL」(自動光量調整)にセット。グループAのストロボを遠隔操作するので、コマンダーのA右側の目盛りを調整します。中心が適正光量「0.0」の位置です。中央のダイヤルを回すと0.3EVずつ変化します。
2. 被写体の露出を明るくしたい場合は、ダイヤルを時計回りに、暗くしたい場合は、反時計回りにしてください。この調整を「調光補正」と言います。
光量調整の仕方が分かりましたので、では実際にポートレートライティングを実践してみましょう。
【撮影】上半身ポートレート撮影の基本
歯科向け上半身ポートレート撮影の「基本セッティング」「カメラ設定」「ライティング設定」は下記となります。
写真構図 縦位置構図(注意:ストロボ発光部の重みで回転する場合がありますので、三脚ネジをしっかり締めてください)
被写体~カメラの距離: 1.8m
被写体~ストロボの距離: 1.3m ※アンブレラとの距離ではありません
ストロボの設置位置(水平角度): 約40° ※45°の位置から約10センチほど同心円状で正面寄りに移動します
ストロボの高さ: 被写体の目線の約10センチ上
アンブレラの軸の方向: モデルの首のあたり
焦点距離:50mm
ISO400
絞り:F5.6
シャッター速度:1/200
コマンダー(Air10s)設定
モード:TTL
調光補正:+0.3~1.7EV
その他の条件
被写体~背景距離:90cm ※距離を短くすると背景に被写体の影が入りやすくなります。
定常光:通常のLED照明
ポイント
調節の考え方
以上のような設定で撮影した写真が以下になります。
ストロボ1灯だけのライティングの場合は、何かを優先しなければなりませんが、今回は歯科向けなので「口元がはっきり見える」ことを心がけました。
ストロボの前に光を透過拡散させるトランスルーセント・アンブレラを使用していますが、口元がはっきり見えるようにするために、二つのことに注意しています。一つはストロボの高さを上げ過ぎないこと、もう一つはアンブレラの軸(ストロボの光の方向の中心)を首に向けることです。これにより、口元が明るくはっきり見えるようになります。
トランスルーセント・アンブレラのメリットは、ストロボの前に取り付けるので、反射型傘より省スペースで使用できることと、被写体の目にキャッチライトがより大きく映ることです。
<背景の明るさについて>
背景を明るくしたい場合は、背景に向けてストロボをもう1灯、照射するだけでOKです。背景に向けてストロボを発光させると被写体の影を消したり、目立たなくさせることができます。
1灯だけで背景を明るくするには、ISO感度を上げる方法がありますが、定常光の色味が被写体の肌の色に影響する場合がありますのでご注意ください。1灯だけの場合は、影の目立たない黒やグレーの色の壁を背景として利用するのも一つの方法です。
【撮影で気をつけること】
1. 服装/背景と明るさのバランス
ストロボはTTLモード(コマンダーの設定モード)で動作しております。TTLモードは自動で発光量を調節してくれる便利なモードですが、オールマイティではありません。画面の大部分を構成している「背景の色」や「被写体の服の色」の影響を受けて露出が変化するため、人物の露出を適正にするために「調光補正」を行う必要があります。「調光補正」は上記の「コマンダーの設定」をご参照お願いします。
調節のポイント
・女性を撮影する場合は、シワなどが目立ちにくい明るい露出が好まれる傾向があります。
・背景や服装が白い場合は、露出が明るいとカメラが判断してストロボの発光量が小さくなり、顔が暗くなるため、プラス補正が必要になります。
2. アンブレラを取り付けるときのライトスタンドの足の向き
トランスルーセント・アンブレラはストロボの前に取り付けるのですが、その時、ライトスタンドの足の向きをアンブレラの向きに合わせてください。
アンブレラと同じ方向に足を向けることで、スタンドが倒れにくくなり、万が一倒れても被写体の方に向かって倒れません。
3. アンブレラの光漏れと色被り
トランスルーセント・アンブレラはストロボを前に向けて発光させる透過拡散型アクセサリーのため、光漏れが気になることがあります。
光漏れは、ストロボの取り付け位置がアンブレラから離れている場合や、ストロボをサイド寄りに設置した場合などに起こりやすくなります。
発光面積が大きくして光をソフトにしたいため、傘の面積いっぱいにストロボ光を当てたくなり、このようなことが起こる場合があるのですが、撮影画面に映り込んでいる場合は、調整を行ってください。
また、設置場所の広さにも関係しますが、壁や天井に色が着いている場合は、漏れた光が反射して色被りを起こすことがあります。その場合は、壁や天井の前に白布を垂らすなどの工夫が必要となります。
4. フレア・ゴーストの防止のためのレンズフード
今回の撮影のように、カメラのレンズ前面から近い場所に明るい光源(ストロボおよびアンブレラ)がある場合、光源が撮影画面の外側にあっても、横から入ってきた光がレンズ内で乱反射することにより、画面全体が白っぽく不鮮明になったり(フレア)、1箇所または複数箇所に白っぽい輝点(ゴースト)が映り込むことがあります。
このような現象を防ぐためには、レンズフードの使用が有効です。もしレンズフードを取り付けてもフレアやゴーストが発生する場合は、レンズと光源の間に遮光板(黒い板状のものなら何でも可)を配置して、レンズから光源が直接見えないようにしてください。
また、レンズやレンズに取り付けられているフィルターが指紋などで汚れていると、画面の一部または全体に霧がかかったような不鮮明な画像に写ることがありますので、特に油性の汚れが付いてしまった場合は市販のレンズ用クリーナー(クリーニング液、クリーニングペーパー)で清掃してください。(他の洗剤や溶剤はレンズのコーティングや周りの部分を傷める恐れがあるためご使用にならないでください)
使用機材
ストロボ i60A*2
コマンダー Air10s*2
アンブレラホルダー FT-01
ライトスタンド LS-50C / LS-55C / LS-65C
アンブレラ 透過型または反射型
以上、ストロボ1灯で撮れる上半身ポートレートの基本でした。ストロボ1灯だけでも、他にもたくさんの工夫ができますので、またご紹介したいと思います。
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更新履歴:
2021/5/25 「4.フレア・ゴーストの防止のためのレンズフード」追記
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